舞台芸術制作室
無色透明
烏丸ストロークロック×五色劇場
「新平和」リクリエーション
2016年より、京都の劇団・烏丸ストロークロックの柳沼昭徳と広島とゆかりのあるメンバーが3年かけて、リサーチと試演を重ね作り上げた原爆劇『新平和』をリクリエーションし、2021年冬には東京のこまばアゴラ劇場を始めとする国内三都市の劇場をめぐります。
このリクリエーションにあたり、新たな創作の参加メンバーを募集します。このプロジェクトでは、参加メンバーは作品に出演するだけでなく、自らフィールドワークやインタビューを行い、それらを作品創作へフィードバックしていく創作手法をとっています。
◎ 公演
● 京都公演@THEATRE E9 KYOTO
2021年12月24日(金)ー26日(日)
● 東京公演@こまばアゴラ劇場
2022年3月3日(木)ー3月6日(日)
● 宮崎公演@三股町立文化会館ホール
2022年3月12日(土)ー13日(日)
◎ 参加者
澤 雅展 坂田光平 深海哲哉 山田めい 藤井友紀 長澤拓真 東 圭香
高山力造 福井菜月 松陰未羽 小林冴季子
◎ お問合せ
構成・演出:柳沼昭徳 (烏丸ストロークロック) より
『新平和』リクリエーションにあたって
広島アクターズラボで取り組んだ「新平和」の創作は、原爆という人類史上類を見ない大量殺戮に遭遇した広島の子孫たちが、戦後75年間に様々な変容を見せた「平和」という言葉に収斂されるディテールを掘り起こし、今に生きる人々の表現として再構築する試みです。氾濫する「平和」という言葉や言論空間から俯瞰するのではなく、同じ生活者として原爆投下という行為がその後市井の人間の人生に及ぼした影響と今の広島の現状を伝えられる作品を目指してきました。
創作にあたって参加メンバーは3年のあいだ、当事者へのインタビューとフィールドワークを重ね、多くの資料を共有しさらに、2度の試演会を行い広島の観客からのフィードバックを経ました。原爆劇といわれる作品の多くに見られる、単純化や政治的扇動性に依ることなく、様々な取材を通じて得た「およそ個人では解消不可能な複層的な混沌を背負わせるということが原爆の災厄」であるという視点に基づいて、本作ではこうした混沌を持つ一人の老人の人生を観客が観察するという手法を用いています。世界的にそうであるように、広島では当事者の高齢化にともなう証言の継承が叫ばれるなか、現在様々な分野での試みが行われていますが、本作を通じて演劇もまた有効な一手であることを提案しています。
作品について ※リクリエーション出演者募集時のコメント
「新平和」は2016年より広島アクターズラボで結成された「五色劇場」のメンバーが、3年間かけて創作してきた原爆劇です。2019 年に広島、福岡での本公演の上演を経て、この作品を上演し続け、多くの土地、世代の方に観て頂きたいと考え、国内、海外での上演を目指しプロジェクトを継続しています。
本作品は原爆を題材にしていますが、それを歴史上の劇的な出来事とした単なるドラマとした作品にしないことを念頭に創作を行っています。この作品には、イデオロギーや特定の宗教、国や人への糾弾、正義感などは存在せず、芸術という不可侵の立場から、75年前にも今と同じ「日常」があり、戦争、原爆投下という不条理が人の手で為されたことに、同じ人間としてどう向かいあうかを問うための文化の為す仕事の一つと考えています。
なぜ今、戦争や原爆についての作品を創るのか、と考えた時、そこで生み出された不条理は、現代に至るまで教育、人種、価値観、倫理など、この国に生きる人々に大なり小なり影響を及ぼしており、そこには時間と共に「平和」の影に黙殺されている歪や、大きな波に消えかかる小さな声が有ると感じ、演劇とはそういった事を見過ごさない為に存在しているのではないか、と感じているからです。
この創作は、多くの時間と相応の教養を要する共同作業の連続です。しかしそもそも他者を演じるという事はそういった作業が付随するものではないか、と考え、俳優としてのトレーニングも兼ねあえてこの創作スタイルで行っています。俳優一人一人が、自らの演技に文脈をもたなければ成立しない作品のため、いわゆる通常の公演のような与えられた台本を演じるスタイルとは異なりますが、再稼働に際し、新たに共に創るメンバーを募集したいと思い、この度の募集に至りました。
ご応募をお待ちしております。
プロデューサー 岩﨑きえ
2019年「新平和」本公演 舞台写真
©️KIE